2025/04/30
旭建設の女性interview【前編】 現場の「当たり前」が変わってゆく。

ICTなどの新技術導入のみならず、働き方改革の分野でも大きく前進し、性別や年齢を問わずさまざまな人が働きやすい職場として注目を集める『旭建設株式会社(日向市)』。女性社員の活躍も目覚ましく、男女共同参画社会づくりに関する功労者として、同社社員の岡田久美子さんは今年1月、県の「女性のチャレンジ賞」を受賞されました。
今回は、そんな岡田さんを含む3名の女性社員へのインタビューを通して、建設業における女性の働き方やキャリアアップのヒント、また、同社の働きやすさの秘訣を探ります。

(写真左から)
●アセットマネジメント部 部長 岡田 久美子さん[入社14年目]
橋梁やトンネル補修工事の施工管理業務を担当。同社で初めて女性監理技術者に抜擢された実績をもつ。
●工事部 井上 優花さん[入社2年目]
入社1年目は産業開発青年隊に在籍。現在は現場で施工管理の経験を積んでいる最中。
●工事部 建設ディレクター 寺原 幸真さん[入社3年目]
施工管理業務に従事していたが、令和6年には同社初の建設ディレクターに就任。取材時は臨月で産休を控えていた。
知識と経験が自分を強くする。
― 一昨年(令和5年)、旭建設の女性社員で初めて「監理技術者」として現場を担当されましたが、当時どのような心境でしたか?
※監理技術者とは⋯
一定規模の工事現場に配置が義務付けられている、工事の総合的な管理・監督を担う技術者のこと。1級国家資格や豊富な実務経験などの要件が求められる重要なポジション。
岡田さん: 正直なところ、あまり不安な気持ちはありませんでした。というのも、会社が私の負担が極力少なくなるよう配慮して、気心の知れたメンバーや経験豊富なメンバーを周りに配置してくれたからです。

岡田さん:その時よりも、はじめて「現場代理人」に就任した時のプレッシャーの方が記憶に残っています。現場代理人というのは、工事の品質、安全、進捗管理のほか、事故が起こった場合の法的責任も負わなくてはいけない責任の重い立場です。ふつうの技術者として担当していた時よりも、数段上の重圧を感じました。
― はじめて現場代理人を任された時、現場で困ったことはありましたか?
岡田さん:当時は今よりも女性が少なかったですから、シビルワーカー(作業員)さんの中にはそっけない態度で接してくる方がいたり、こちらを試すように専門用語でまくし立ててくる方がいたりしました。もちろんすべての方がそうというわけでは決してないですし、私がまだ若く未熟だったからというのも理由の一つにあるかもしれませんが。
現在では、経験を重ねて知識も増え、相談されたり意見を求められたりした際にも慌てず対応できるようになっていったことで、徐々にそういったことはなくなりました。うまく現場を回すには、“自信”が何よりの武器になるなと実感しました。単純に、年を重ねて図太くなったから⋯という説もあります(笑)。いずれにせよ、今ではよほどのことがない限り動じません。

岡田さん:もう一つ無視できないのは、時代が変化するにつれ、 “現場で働く女性”に対する目線が優しくなったと言いますか、当たり前と捉えられるようになったこと。そのおかげか、ここ5年でガラッと現場の雰囲気も変わりました。
実際に女性が増えましたし、お互い共感をもって愚痴を言い合えたり相談できたりする仲間もできました。女性だからこその悩みを一人で抱え込まなくて良い環境になったことも助けになりましたね。
「本物の技術者」を育てる。
― 「アセットマネジメント部」の部長を務められていますが、どのような部署なのでしょう?
また、就任当時の心境を教えていただけますか?
岡田さん:橋梁やトンネルの老朽化が世間的に問題視され始めた頃に生まれた、補修・強化を専門とした部署です。立ち上げと同時に、私が部長に抜擢されました。まだ入社間もない時期で現場経験も浅く、分不相応に感じて自信がもてなかったというのが本音です。今も自信満々とはいかないのですが(笑)、優秀な部下に恵まれたので安心です。
― 後進の技術者を育てるために、取り組まれていることはありますか?
岡田さん:これは女性に限らないのですが、週に1回、工事部の若手社員を対象に「土木塾」という勉強会を開いています。国家資格の試験対策であったり、ドローンを使った測量方法であったり、さまざまなことを教えるのですが、わたしのこだわった点は、「実務では直接使う機会のない土木の基礎的な知識」も教えることです。今の時代は、ICT機器を駆使することで測量を初めとする業務がかなり効率化されてきていますが、単に機材を操作できるだけでは「技術者」とは呼べません。何かトラブルが発生した際に確かな知識をもって対応できてこそ、本領発揮といえます。

「苦手なこと」を「得意なこと」で補う。
― 重い資材の運搬など、女性には難しい作業もあると思いますが、そういう場面に直面した際にはどのように工夫していましたか?
岡田さん:同じ女性であっても、体格・体力は人それぞれですよね。わたしは背が高いのでその点は有利ですが、小柄な方だとできないことも増えてきます。その場合は、「基本は自分に厳しく、時にはうまく甘えられる」、いい塩梅を身に着けると良いのはないでしょうか。
最初から「私は重いものは持ちません」というスタンスではもちろん駄目。かといって、周囲に心配かけたり、無理をして怪我をしたりするのはよくありませんよね。やってみる姿勢をとって、どうしても難しい場合はそれに固執したりせず、「代わりに自分ができること」を見つけると良いと思います。
― 例えば、岡田さんはどのようなことを?
岡田さん:私の場合は、4tトラックの運転がどうしても苦手で。代わりに、工事前の地元のあいさつ回りを任せてもらいました。工事中も、ちょっと作業音がうるさいなと思えば近隣の方に「すみません」とお伝えに行ったりします。女性が訪問すると、住民の方もより安心するみたいなので、これは「得意分野」といえるかも知れませんね。

「女性だから」を耳にしない業界へ。
― 今後、女性がますます活躍するには、何が必要だと思いますか?
岡田さん:あえて「女性」のみに焦点を当てるのではなく、性別・年齢問わず、すべての人が働きやすい会社を目指して環境を整備すること、でしょうか。わたしたちは、“みんなが利用するインフラ”を仕事にしているわけですから、 “みんなが働きやすい職場”を目指すこともまた、必要なことですよね。
「女性だから」という表現を耳にしなくなる未来が一番、理想的だとわたしは思います。
〈中編へ続く ※中編は5/2投稿予定〉

【この記事を書いた人】
- 所属:県土整備部管理課
- 名前:山田
- 一言:アイドルのコンサートが生きがい。
土木の魅力をはじめ、たくさんの情報を皆様にお伝えしていきます!