働き方改革×建設業

誰もが働きやすい業界へ 「建設ディレクター」誕生!

「建設ディレクター」とは、ITとコミュニケーションスキルでバックオフィスから現場を支える新しい職域です。これまで現場の技術者が担ってきた書類作成や工事写真の整理などの情報処理業務を引き受けることで現場の負担を大きく軽減します。
働き方が変わるだけでなく、女性の活躍機会の創出など多くのメリットが期待されている建設ディレクターの誕生により、建設業界が変革の時を迎えようとしています。
※建設ディレクターは、一般社団法人建設ディレクター協会の登録商標です。

期待される6つの導入効果
働き方改革の実現
女性活躍の加速
デジタル人材の成長を支える
若者の活躍を可能に
キャリアパスの多様化
多様な働き方の実現
3つの視点で紐解く!建設ディレクターがもたらす変革

日新興業株式会社インタビュー

令和4年度から「建設ディレクター」の導入に向け、他社に先駆けて一歩を踏み出した日新興業。経営、建設ディレクター、現場の視点から、取り組みの意義を紐解きます。

  • 経営者

    代表取締役会長
    河野 孝夫さん

  • 建設
    ディレクター

    土木部 ICT推進課
    中尾 麻椰さん

  • 現場代理人

    土木本部長
    成岡 弘二さん

Q.建設ディレクター導入を決めた理由を教えてください。

A

「宮崎県建設業ICT推進コンソーシアム」の定例会で建設ディレクター協会の理事長・新井恭子氏の講演を聞いたことがそもそものきっかけです。新井理事長は現場技術者の業務を190〜200に細分化し、「うち60%がバックオフィス業務であり、それらは現場経験のない人でもある程度こなせる」と語られました。常々、なんとか現場代理人の負担を軽減したいと考えてはいましたが、業務内容が特殊であるためなかなか手が出せずにいましたので、不透明だった部分がまさに可視化されたことに驚き、分析の詳細さと説得力に感銘を受けました。これまで「建設ディレクター」という言葉自体は知っていても興味を持てずにいましたが、そこではじめてこの職域の有意義性に確信がもてたのです。

Q.導入に向けて取り組んだことは?

A

取り組みの中核メンバーへの情報共有や意思統一を進めるため、現場経験35年の土木本部長・成岡や中尾にも同席してもらった上でさらに建設ディレクター協会から詳しい話を伺いました。当然現場からは懸念の声も上がるだろうと予想していましたが、成岡が「ぜひやりましょう」と言ってくれたことがなんとも心強く、自信になりました。その後は全国の先進企業の導入事例を参考に、その手法を取り込みつつ導入を進めていきました。
社員にも、「建設ディレクター」とは何か、どのような取り組みを実施するかなどを説明して理解を求め、長期的なスパンで人材育成を図るため、「即戦力」と期待しない雰囲気づくりを心掛けました。

Q.導入の効果と今後の展開について教えてください。

A

まだまだ体制の確立などに取り組んでいる段階ですが、現時点で、現場代理人の負担軽減だけではないさまざまなメリットが見えてきました。
これまで多忙ゆえに疎かになっていた次世代への技術の継承、探究、ICTの導入など、現場代理人の“本来の仕事”に十分な力を注ぐことができます。
加えて、体力を必要とせず、ライフステージの変遷にも柔軟に対応できる建設ディレクターという職域が誕生したことは、女性の活躍機会の増加に大きく寄与するはず。結婚・出産を機に退職を余儀なくされた女性たちをやるせなくもどかしい気持ちで見送るしかなかった時代もありましたが、それももう終わりでしょう。
弊社の建設ディレクターは研修中の者も含めて現在5人。うち4人は業界未経験者です。これまでにない彼らの“視点”が業界に新風を吹かせてくれることと期待しています。

Q.今の仕事を選んだきっかけは?

A

子どもの保育園入園が決まったことを機にパート勤めをやめ、正社員の仕事を探していたところ出会ったのが日新興業の求人でした。業務内容に“特殊事務”とあり興味をそそられたものの「資格も職歴もない自分ではおそらくダメだろう」と半ば諦めつつ面接に挑みましたが、まさかの採用。「心配しなくても、全部入社してから頑張ればいいから」と言われました。
当時私は土木関係のバックオフィス業務を担う事務員として入社しており、会長が「建設ディレクター」の導入を決定されたので、私が“一期生”としてその肩書きを担うことになりました。もともと社内で事務処理の分業を目指す流れがあった中での導入だったようです。
建設ディレクター協会の講習はすべてeラーニング形式で、オンデマンド講座とライブ講座からなり、1ヶ月にわたって受講て資格をとりました。すべて平日に、オンラインで行われるため、県外まで足を伸ばしたり休日に出社したりする必要もなく、小さな子どもがいる私には有り難かったです。

Q.建設ディレクターでよかったと感じる場面は?

A

最初は教えていただくことばかりで「むしろ負担をかけているのでは」と心配していましたが、現場の皆さんは「今はそういう時期」と温かく対応してくださり、「助かったよ」と声を掛けていただけることも。そういう時は「次はもっと頑張ろう!」とやる気がみなぎります。
建設ディレクターとしての経験を積むにあたっては、あらかじめ作成した計画表をもとに「時間はかかるけれども専門性が低い」業務を中心に段階的に移管を進めることを基本としていましたが、その進行度は個人の習熟度に応じて変わります。計画よりも多く任せていただいたり、難易度のより高いものに挑戦する機会をいただけたりすると、仕事ぶりを認めていただいたようで嬉しくなりますね。

また、会社に認められた確固たる自分の役割があることも自信につながっています。「戻って来られる場所がちゃんとある」という安心感が、家族を増やす決断を後押ししてくれました。今、お腹の中に第二子がおり、間も無く産休に入ります。

Q.今後の目標を教えてください。

A

工事の発注元によって書類の様式などは異なりますので、自分が経験した業務のノウハウがスムーズに共有できるよう、マニュアルのフォーマットを固めました。普段の業務と並行して、今後はマニュアルの作成を進める予定です。
現場代理人はこれまで、「自分がもう一人いたら」と思う機会がたくさんあったと思います。すぐに熟練の代理人の片腕になることはできないかもしれませんが、「ディレクターがいてくれてよかった」と少しでも思っていただけるよう、頑張りたいです!

Q.建設ディレクターの導入について、
当初はどう感じられましたか?

A

現場代理人として日々書類作成に追われる中で、「これは私でなくてもこなせるのではないか」と感じることが多々あり、「建設ディレクター」はまさにこれまで抱いてきた課題感にマッチするものでしたので、導入には賛成でした。

Q.導入に向けて取り組んだことは?

A

現場経験が豊富であることを活かして、建設ディレクターと現場の仲介役を行いました。
「自分でやった方が早いということもあるだろうが、手間がかかっても今は“教える”ことを優先してほしい。最初はうまくいかないこともあるかもしれないが、ゆくゆくは必ず業務改善につながる。今は“初期投資”だと思って協力して進めよう」と現場を鼓舞し、協力体制の確立を目指しました。
もちろん専門的な知識や現場経験が必要な書類もあり、「何を任せたら良いのか」と迷う技術者もいたため、私がその内容を確認し、建設ディレクターに回せる仕事とそうでない仕事の判別を手伝いました。また、建設ディレクターが個々の技術者のやり方の違いに戸惑っている時も私がサポートに入ることにしています。

Q.建設ディレクター導入による変化は?
また、今後期待することは?

A

これまでは作成した書類データの管理なども技術者が個々で行なっていたため、過去のデータを引っ張り出して別の現場に応用したり、引用したりといったことが難しかったのですが、今は建設ディレクターによりその保存・管理も体系化されているため、横断的なデータの検索・活用が容易にできるようになりました。
また、「これをやっておいて」と頼める人ができたことは、単に労力的な負担だけでなく心理的な負担の軽減にもなっています。

Q.建設ディレクターに今後期待することは?

A

元請けとして行う土木工事、下請けとして行う防水工事、弊社の事業内容はさまざまで、それぞれ作成しなくてはいけない書類の様式・種類・制約も多種多様です。さらに“着工前に提出する書類”と、“施工完了後”に提出する書類では難易度が違います。今後さらに経験を積み、技術者のレベルに踏み込んでくれれば、任せられることの幅も広がってくるはず。これからも引き続き、建設ディレクターの育成に向けた協力は惜しまないつもりです。